接待は知らない高級店より、馴染みの老舗に限る。

外園は焦っていた。

日暮里駅から待ち合わせの喫茶店まで急足で向かっていた。

まだ7月中旬。夏真っ盛りの中汗だくで向かう先には1時間以上待ちぼうけを食らわせてる本間がいるためだった。

その日は夕方から浅草で会食があり、その前の時間がたまたま本間と外園両方に空き時間があり、新しいオフィス候補の下見に行く予定だったのだ。

そのため日暮里の喫茶店に14時の待ち合わせをしていたのだが、前の会議が長引いて外園は大遅刻をしていた。

約束の場所についたのは15時を回ろうかという時だった。


いつも2人で日暮里で打ち合わせする時はこの喫茶店と決めたところがあった。

そこは、店内は昭和から続く雰囲気のお店で、椅子は全て黒塗りのソファ。小さなテーブルにはオムライスやナポリタンなど懐かしいメニューがギッチリ書かれている。

店内のお客さんたちも皆髪を真っ白にした昔ながらの常連客たちばかりだ。

「社長すいません!遅れました」

「遅かったなー、待ちくたびれちゃったよ」

「前の会議が長引いちゃってて、・・・あれ?」

外園はテーブルに置かれたビール瓶2本に目が行った。

(いつも通り飲んで待ってたな..)

「馬鹿野郎!これは俺じゃない!前の人のが片付いてないだけだ。俺はまだ水しか飲んでない」

「なるほどそうだったんですね」(よかった今日の社長はまともだった。)

「じゃあ僕はコーヒーにしようかな」

外園がスタッフを呼び止めようとすると、

「いやもう出よう。パパッと下見して浅草に飲みに行くぞ」

そう言うと本間は伝票を持ってレジに向かった。

(あれ...?水しか飲んでなかったはずだよな)

「2本で2000円も取るのかぁ...」

本間はボソッとつぶやいた。

「やっぱり飲んでるじゃねーですかッ!!」

オフィス候補の下見はイマイチなものだったので、物件は早々に切り上げ私たちは浅草に向かった。

今日の打ち合わせは某お酒メーカーのお偉いさんさんとの会食だった。今お取引させていただいてる内容を今後どう展開するかという事前のすり合わせの時間だ。

予定時間より少し早く着いてしまった私たちはお店の入り口で先に待つことにした。

本間が浅草の接待で使う店は「どぜう」と決まりがあった。

浅草のどぜうと言えば、駒形と飯田屋の超有名店があり、どちらも創業100年を優に超える老舗だ。

なかでも本間は飯田屋だった。

下町生まれの本間が昔から使っているお店というのもあるが、飯田屋は掘りごたつ式になっているので足を伸ばせる。

また働いてるおばちゃん達も根っからの下町っ子で愛嬌があり、非常に愉快に飲めるからだった。

お客様達も到着され、さっそく楽しい会食の開始だ。

「まずは『うざく』と『ぬた』。あとはビール瓶2本ね!」

飯田屋に来たらまずはここからである。

※うざくイメージ

『うざく』というのは鰻の下にキュウリを敷いたサッパリと頂けるお新香のようなものだ。

※ぬたイメージ

『ぬた』は飯田屋のはマグロ、わかめ、ウド、クラゲに酢味噌を絡めたツマミである。濃い味のぬたは非常にお酒が進む代物だ。

これでまず一杯やったら、おまちかねの『どぜう』の出番である。

※どぜう鍋イメージ

本間が頼むどぜう鍋は必ず『ぬき』を頼む。

ぬきとは、骨を抜いた状態のどぜうが出てくるのだ。これを注文しないとどぜうそのままの姿で出てきて小骨が多いどぜう鍋となる。どちらも美味しいが、私たちはいつも骨なしで食べるのが好きだった。

この骨抜きどぜうを見て、お客様の料理長は語り出した。

「このどじょうの骨を抜く作業が嫌いだったんだよー」

話を聞くと、若手時代に仕込みとしてどぜうの骨抜きを永遠とやらされていたそうだ。

そんな話をしていると、女将さんや厨房の職人たちまで出てきてくれて、どぜう料理のアルアル話に華を咲かせた。

そのままどぜう話で盛り上がった私たちは無事会食をいい方向に話をまとめることができたのだった。

「まあ、いろんな接待があるけど、高級な知らない店より、馴染みの店でしっかりフォローしてくれる店がいいよな。」

「そうですね、このお店じゃなかったら女将さんたちも混じってあんなに盛り上がることはなかったでしょうからね」

「今後俺たちはこういう接待を心掛けていこう!これがクックピット流接待だ!」

「そうですね、このお店じゃなかったら女将さんたちも混じってあんなに盛り上がることはなかったでしょうからね」

「よし、じゃあもう一軒馴染みの店に親睦を深めに行くぞ!!」

「はいッ!!」

そこからは社長馴染みのスナックでの親睦だった。

店を出たら何故か外が明るかったのは、きっと私たちはタイムスリップしていたのだろう。
店には空いたボトルが並び、財布の中身は一枚の領収書に何故か変わっていた。摩訶不思議な体験である。

翌日の二日酔いで2度と飲むまいと後悔したのは、いつものクックピットの日常である。

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