焼肉食べたら何故か怒られた話 〜焼肉って怖い…〜
#TALK14 「焼肉を食べただけなのに…」
外園は疲れていた。
本当に疲れていた。
家に帰ったのは何日前であっただろうか?
ベッドで足を伸ばして熟睡したのはいつだったであろうか?
時計は20時過ぎを指している。
時計を見るや今日も帰れないことを察してため息をつく。
時期は23年12月。
もう2週間もすれば幸せなクリスマスがやってくる師走の季節。
私たちは一大プロジェクトに立ち向かっていた。
コロナでボロボロだった会社を立て直すために入社して早2年。
大量にあった大赤字も2年間ですべて消し去った私たちは、その成果が認められ銀行から大型の資金調達に成功していた。
それにより会社は急拡大したのだ。
毎日鳴り止まない新規契約の電話の嵐に対応するだけで、日中は過ぎていき、プロジェクトを遂行するための作業は日が暮れてからやっと着手できる有様。
売上の増加に伴う従業員の急増化。それによりオフィスに机が入りきらないほどになり、事務所の移転や、新従業員のための手続きやパソコンの設定・・・。
日々忙しい業務の中に、追加でこなさないといけない仕事が目に見える形で増えていく毎日。
そんな日々の対応に追われ、私はとても家に帰れる状況ではなかったのだ。
そんな疲れた日々、そんな時口にする言葉は決まってこの言葉。
「あぁ、海が見てぇ・・・」
「あーあ、温泉いきてぇなぁ〜」
「もう疲れた、ただ焚き火を見つめているだけの時間が欲しい…」
完全にギリギリの人の発言である。
そんなボロボロの私の発言を聞いて、あるスタッフが口を開いた。
「俺は肉がくいてぇなぁ・・・」
「それだ!!!」
私は声を上げた。
仕事以外でこんなにピンと来るのはどれくらいだろう。
最近では寝てる時も社長の夢ばかり見てうなされているほどだ。
それを社長に相談したら、
「え、お前俺のことそんなに好きなの?悪いが抱かせることはできないなー」
とトンチンカンなことを言われ、少しイラッとしたのはここだけの話だ。
そうと決まってからのスピード感は異常であった。
すぐにスタッフの仕事の手を止め、私は肉を食べなければならない理由を熱く語った。
タンパク質を摂らないと集中力が高まらないこと。
座り続けているだけでは非常に効率が悪いこと。
肉を食べると筋肉がつきやすくなること。
喉の渇きがビールを求めていること。
ただただ私は熱く語った。
発言してから15分後。気づけば大型ホームセンターに立っていた。
「よし、俺は肉を仕入れてくる!」
「じゃあ俺はホットプレート買ってくるわ」
「じゃあ俺は酒だな!」
そういうと一目散に全員それぞれの買い物に出かけた。
この時ばかりは本当にいいメンバーが揃ったものだと胸が熱くなった。
酒を飲むと決まった時のクックピットの一体感は世界レベルで戦えるメンバーと言えるだろう。
(仕事でもこれほど効率のいい動きができたら・・・。)
そこから10分後に合流した私たちの装備はまさに完璧であった。
ホットプレートに、肉に、酒。
これ以上必要なものは何もなかった。
会社に戻った私たちはすぐに準備に取り掛かる。
まずは乾杯だ。
最高の乾杯を味わうために、ちゃんと出発前にグラスを冷やしている。こういうことには、抜かりがない。なんと手際がいいことだろう。
キンキンに冷えたグラスにビールを注ぐと私たちは一気に飲み干した。
「この一杯のために生きている!」
幼少期からクレヨンしんちゃんでひろしのこのセリフを何度聞いただろうか・・・。
今ほど この意味がわかる日はない。
最高のビールを味わいながら、新品のホットプレートで早速肉を焼き始める。
「今日はもう仕事はしねぇ!絶対してやらねぇ!」
誰も口にしなかったが、皆同じ気持ちだったことだろう。
なぜなら、みんな3分も経たない間に3本目のビールに手を伸ばしていたからだ。
牛たんを塩レモンであっさり頬張り、肉の王様カルビで肉を十分に味わったら、味の染み渡ったホルモン、レバーを楽しんでいく・・・
「あぁ、幸せだ。仕事を頑張った後のビールと焼肉は最高だ!」
そんな悦に浸っている中、1人呟いた。
「なぁ、会社で酒飲んで焼肉なんてしていいのかな・・・?」
みんなの手が一瞬止まった。
もちろん、いいわけがない!120%明日社長に怒られる。
だが、今知ったことではなかった。
私たちのストレスは限界に達していたのだ。
「いいんだ!俺たちはこんなに頑張ってるんだ!!きっとわかってくれる!
もしわかってくれない社長なら俺はこんな苦労してついて行ってないんだ。」
そう私は一気に捲し立てた。
「そ、そうだよな」
みんなは少し安心した表情を浮かべた。
そこから落ち着きを取り戻した私たちは深夜までお酒を味わった。
もちろんその後は綺麗に掃除し、換気し、完璧に証拠隠滅を図ってから解散した。
朝、チラホラ社員が出勤を始めると、女性社員たちはこぞって私を指差して言う。
「外園さん!昨日会社で焼肉したでしょ!!」
(なぜ、バレたんだ・・・。証拠隠滅は完璧なはずだ)
「そんな非常識なことするわけないでしょ。バカ言うんじゃないよ」
「じゃあこのホットプレートはなんですか!冷蔵庫にお肉も入ってますよ!」
はい、完全にばれていました。
その後もちろん社長に呼び出され散々お説教されました。
「公私混同するんじゃない!会社でしかも室内で焼肉やっていいわけないだろ!」
「でもストレスが・・・」
「でもじゃない!焼肉なら食いに行けばいいだろうが!」
「・・・その手がありましたね!!さすがです!」
「さすがじゃない馬鹿野郎!!」
「ったく。ちゃんと反省しろよ!・・・そして、今度からは俺も誘えよ〜」
「そーゆーことかいな!」
「もー、しょうがないなぁ〜。次回はちゃんと呼びますよー」
2人で笑っていると、社長室の扉が急に開いた。
「あんたたちいい加減にしなさい!!会社で焼肉していいわけないでしょ!!!!」
一番怒っていたのは、社長の奥様であった。
社長の奥様が怒ったことで、一緒に社長も怒られた。「お前のせいで俺も巻き込まれたじゃねーか!」と追加で怒られたのは言うまでも無い。
割とどうでもいいことで説教されたのはいつ以来だろうか。少なくても大人になってからはない気がする。
私は大いに反省した。
そりゃそうだ、ここは会社だ。
いくら休憩室とはいえ、みんなが翌日には仕事をする空間で焼肉なんてしていいはずがなかった。
仕事で疲れて判断が鈍っていたのだろう、もう2度とするまいと心に誓い 社長に謝罪を入れた。
翌日。
「腹減ったな・・・」
誰かが呟いた。
「そうだな・・。」
時計を見ると20時を回っている。
そりゃお腹も減るわけだ。
「そういえば、昨日の肉がまだ残っていたな…」
私はそっと、ホットプレートの電源を入れた。
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翌日、私は人生初めての始末書というのを書かされたのであった。
焼肉の恨みは怖い。
皆さんもお気をつけください。
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